爆音の日から4,5日が経っただろうか、二人は依然として森の中をさまよっていた。
行けども行けども先には木々がうっそうと繁り、旅人の行く手を阻んでいた。
「ここはどのあたりなんでしょう……」
女主人・瀞からもらった地図とにらめっこしながら楽がつぶやく。
「さあな……」
デントの答えは短い。
ウェストルで用意してきた食糧は底をつき、頼りになるのはデントの持っている木の実と、楽が立ち止まっては見つける不思議な草だけになっていた。
二人は会話も少なく、ひたすらに北を目指して……
北だと二人が信じている方向へ向かって歩いていた。
瀞からもらった地図によると、このアスリースの巨大な森は4つの部分に分かれている。
南に大きく広がっているのが“レブル”の森。
この森の北東には(寄ることはできなかったが)アスリース城が印してある。
そして、このレブルの森を抜けると、と言ってもまだ森が続くのだが、“ヨーギル”の森となっている。
アスリースの東西にわたって細長く横たわっている森だ。
残りの二つの森、すなわちストレシアの砂漠を囲むコの字型の森、湖沼地帯から北の森にはそれぞれ“ハルント”、“ファンベラ”という名前がついている。
歩行速度と日数を考えると、すでにヨーギルの森に入っている。
デントが3日前に「魔法的力の異常がなくなった」と言っていたからこれは間違いないだろうと思う。
毎日が歩き通し、しかも見ているのは同じ景色ばかり。
こんな旅をしていると、楽しかった昔のことが思い出される。
デントはラジアハンドでの悪友との少年時代を、楽はテーヴァの港町バッカスでの薬草店巡りの日々を思い出していた。
このころになると、もう会話は全く無い状態で、疲労と空腹からか、何かを考えながら歩くことはなくなった。
そんな風にボーっとしながら、足だけは動かして北へ向かっていると、突然、前方が開けた。
ウェストルを出てから8日目のことである。
木々の間から海が見えた。
「やった!」
二人は海をその目で認めると、疲労も空腹も忘れて走り出した。
陽が沈み、薄暗くなった森を駆け抜ける。
岸近くまで来ると、その海が小さな入り江であることが分かった。
「海だ! 海だぜ、楽! 森を抜けたんだ!」
久しぶりに見たデントの笑顔だ。
「で、ここはどの辺だ? 湖沼地帯はまだか?」
笑顔一転、急に切り返したデントの問いに答えるべく、楽が地図を開いた。
「ここは……ハルントの森……の東端です」
地形と地図を照らし合わせながら楽が答える。
「っていうことは……あと1,2日で着くんだ!」
いつの間にか楽の隣で地図をのぞき込んでいたデントが歓喜の声をあげた。
ハルントの森を抜ければ、湖沼地帯は目と鼻の先にある。
「よし、今日はこの辺で一休みして、明日は一気に湖沼地帯だ!」
デントはファイアフェアリーを呼び、楽は、その間に見つけてきた薬草と木の実を煎じて簡単な夜食を作った。