闇市が開かれる季節が来た。
リーザが居候させてもらっているシーフの夫婦の家では、何ら変わりのない事だった。さすがに地元の人たちは興味が無いらしく、一言も話題に昇らない。そんなわけで、リーザが闇市開催の事を知たのは、普通の人よりも少し遅かった。
シーフの二人の名は、妻がセラ、夫がジャンだった。
セラは小太りで、明るくよく喋る。正反対に夫は無精髭を生やし、無口で目つきが恐かった。いかにも強そうだと思ったが、セラに言わせると見かけ倒しのハッタリだという。彼は無口だったが親切で、リーザはすぐに2人が好きになった。
リーザはぼーっとするのがあまり好きじゃないタチだったため、午前中はずっとくるくる働いていたが(家事を、です)午後からはもうすることが無くなっていた。
さてこれからどうしよう〜と考えていると、セラが
「リーザちゃん、やることないならこの街を見ておいでよ」
そういってくれたため、シェプシとともにワジュール探検に行く事にした。
セラとジャンの家はワジュールの街の少しはずれたところにあったがたいして遠くはなかった。
まず見えてきたのは、酒場だった。
ワジュールではなかなか有名なお店らしく人が入ったり出ていったりしている。
「……お酒って20歳以上じゃないとダメなんだよね。……でも! 今回は情報収集が目的だしっ! あと、私なら20くらいに見えないかしら?」
などと適当に言いながら木で出来たドアを押して入っていった。
入ったとたん元気のいい女性の声が飛んできた。
「いらっしゃいませ、酒場「エイバル」へ!! ……あら?」
女性がいぶかしげにこちらを見る。「?」リーザは何か怪しい格好だったかなと自分の服装を見た。……セラの服が映る。
と、カウンターにいた店主がこちらに歩いてきた。
「こらこらお嬢ちゃん。ココは子どもの来るトコじゃないよ?」
なっ……!? だ、誰がお嬢ちゃんなの!!?
「失礼しちゃうわ!! 私これでも17なんだかんね!?」
「ほら、ウソはいけないよ。おじさんは何でもお見通しなんだからね。さ、帰った帰った」
何遍言ってもとりあってもらえなかった。仕方なく、リーザは酒場を出ることにした。
20に見えるどころか、子供と言われたことが彼女にはショックでならなかった。
少し歩いていくと、何ともはや、どこかで見かけたような店を見つけた。リーザは息を飲んだ。忘れもしない、ここはあの「ジュラルミンの店」だった。
シェプシが何も知らずに大通りに出ていく。リーザはあわてて引き戻そうとしたが……遅かった。
客が来ないためか、ボーッと店先につったていたあの店主が満面に笑みを浮かべながらこちらに走ってくる。
リーザは血の気が引くのを感じた。
あっというまに彼女は店の中へ引きずり込まれてしまった。
しかもご丁寧に鍵までかけてる! どうやらこの間のように逃げられないようにするためらしい。
目の前のテーブルに、ドン!と音を立ててメニューが置かれた。
傍らで店主が、注文は今か今かと待ちかまえている。
リーザは錯乱する頭で必死にこの場を切り抜ける方法を考えていた。
とりあえずメニューを見ていった。この間と同じモノが並んでいる。
一つ一つ直感に頼って見ていったが、どれも彼女の第六感は「食べるな!」の一点張りだった。
こうなっては仕方がない。この店主が厨房に行っている間に、壁を破って逃げよう。
そう考えてリーザは、この間の「キュア」を頼んだ。