ファンタジア

ヘスティア2

2・砂漠放浪記

「あのさぁ……」
「何ですか?」
 ユーラストルを少南東に行った……つまり砂漠のど真ん中にヘスティアとエイシャはいた。
「こんな所に落し物をする人がいるのかな?」
「だ…だって何でも屋さんって」
「私は自分が何でも屋って名のった覚えはないよ…
 ただお金稼ぎのためにいろんなこと引き受けてただけ…じゃなくてっ!!」
「ヘスティアさん、怒るともっと暑くなりますよー」

 ヘスティアが受けた依頼とは、一言でいうと探し物。
 アスリースへ向かう途中、なんと砂漠に落としたらしい。

「本当にこの辺りなんでしょうね?」
「本当ですっ!! ザクの村で一休みした時には確かに持ってました! あの赤い箱を!」
 彼女にしてはは珍しくムキになって言い返した。
「あー…そう、赤いんだ、それ…」
 しかし、とにかく暑い。
 砂漠の真ん中の昼間、落し物探しをしているほうがどうかしている。ヘスティアは手を額に当ててそう思った。
 しかも太陽の光が白い砂に反射して異様に眩しい。
「まあお金は沢山もらえるからいいけど…
 ええいっ!! もう我慢出来ない! シェーナ!!」
「みぃ〜…」
 さすがのシェーナもバテていて、鳴き声も弱弱しいが構わずヘスティアはシェーナに命令した。
「この辺りに落ちている赤い箱を探して! 大至急!」
 肩に乗っていたシェーナはしぶしぶ飛び立った。
「ヘスティアさん、すごいですねー。噂だとビーストマスターらしいですけど」
「まあ一応…ね」
「でもシェーナさんしか持ってませんよね?」
「みぃー」
 その時、シェーナが戻ってきた。
「早いわね。何かあったの?」
 シェーナが来た方向に少し歩く。
 と、砂に埋もれている赤い物体を見つけた。
「あ! あれです!」
 エイシャが走り寄った。
「あのさ、高いお金を払ってまで見つけようとするなんてその箱って何が…」
 ヘスティアが言葉を切った。
 エイシャがその場で急に立ち止まったからだ。
「エイシャ?」
 ヘスティアもエイシャの近くに歩み寄った。
「どうしたの?」
「…あれ、何でしょう・・…」
「?」
 エイシャが足元を指差したのでヘスティアもそっちを見る。
「…へ」
 箱の近くの砂から何かがでていた。ぱっと見ればゴミで終わるがじっくり見ると…
「蛇?」
 砂に似た色の鱗を持った蛇だった。上半身(?)は砂に埋もれていて昼寝でもしているのか、ぴくりとも動かない。
「そーっと、刺激しないように戻ろう…」
「はっ、はいぃ〜」
 その時、俗に言う運命の悪戯がおきた。
 エイシャが持っていた箱が汗で滑ったのだ。
「あ」
 ぼとっ。
 運悪く…蛇の上に落ちた。
 蛇がもぞもぞと動き出す。
 昼寝を邪魔された蛇がいきよいよく起き上がり、ヘスティア達を見下ろした。出ていた部分は尻尾(?)の先だけのようで体長は5mはある。しかも…太い。口をぱっくりと開き、2人を睨んだ。同時に鋭い牙が光る。
「サ…サンドスネイク!?」
「ちょっとエイシャ、何なのよサンド何とかって!?」
「えっとですね、砂漠地帯に生息している大蛇です。肉食性で性格も獰猛な非常に危ない動物です!」
 そんな事を言っている間にもサンドスネイクはじりじりと間を狭めてきた。
 どうやら2人を食事にするようだ。
「エイシャ…」
「はいっ!?」
「逃げよう」
「はい?」
 言うが早いかヘスティアは来た方向へ走り出した。
「ちょ、ちょっと待ってくださぁい〜」
 箱を慌てて拾い、エイシャも後を追った。
 しかし、サンドスネイクは砂の中へ潜った。
「このまま町まで戻るよっ!!」
「だから待って下さいってばーー!!」
 ごばっ。
 ヘスティアの足元の砂がふくれあがった。
「…え?」
 ざあああぁぁぁっっっ!!
 砂からサンドスネイクが飛び出す!
「うえぇっ!?」
「回り込まれたっ!」
『キシャアアアッッ!!』
 サンドスネイクは高らかに声をあげるとヘスティアの頭部へものすごい速さで首を伸ばした。
 牙がぎらりと太陽の光に反射した。
「ヘスティアさんっ!!」
 ヘスティアの目前に牙が迫る。

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