僕がこの国、アスリースに来た理由は…………別に理由はないんだな。
ホントはアスリースに行きたかったんだけど、よくよく考えて見ると僕って、アカデミーとかそういうのあんまり関わりたくないんだよね。
まぁ、いつか行くと思う。
僕は、月の出ている夜空を仰ぎ、背中にくっついた羽根をバサバサさせた。
こういう月の夜しか、力を解放することが出来ないからね。
他の有翼人は人間の前でも羽根を見せてるって聞くけど、僕はそんなことは出来ない。
「……………………」
静かな夜だ。
僕はもう一度羽根をばたつかせると、コバルト・グリーンのマントを着た。
僕の白い上着には、茶色の古くなったベルトがグルグル巻になっている。
そこには、同じ色の鞭が引っかかっている。
有翼人の僕、エルファ・フィストは、結構夢見がちで、出逢いを求めて旅をしてきた。
羽根があることを隠して。
両親はいない。
僕が物心ついた頃から親はいなくて、たった一人で旅をしてきた。
優しくしてくれる人は沢山いた。
けど、分かれるのが辛くて、有翼人であることがばれるのが怖かった。
だからわざと、冷たくしてきた。
それでも辛くなったときは、唄を歌う。
そのための、バードという職業をしている。
僕にとっての一番の安らげる場所だ。
「うっ。寒い」
冷たい夜風に吹かれ、思わず身震いする。
(もう帰ろう)
僕は、マントと同じ色の袋を持って、宿屋への道を、歩いていった。