「主曰く、人はパンのみで生きるにあらず。されどまた主曰く、パンにはパンを血には血を」
山道で数人の山賊に囲まれながら仮面の男は喋り続ける。
「つまり人が生きるためにどのような手段を取ってもかまわない、とオレは解釈している」
「つまりそれは俺達にぶっ殺されても文句は言わないってことか?」
仮面の男の言葉を諦めと取ったのか、山賊の頭らしき男は言う。
「まぁ、そう解釈してくれてかまわない。こんな山道を単独で、しかも軽装で来たんだ。襲ってくれと言ってるようなものだな。哀れその旅人は山賊という肉食動物に狩られてしまいましたとさ」
しかし、そんな状況の中仮面の男は口元に笑みさえ浮かべている。
「しかしだ、あんた等が生きるためオレを狩る。それに文句は言わない。その代わりオレも心無し抵抗はさせて貰う。だから――」
その言葉と同時に男はローブのポケットに入れていた手を挙げる。
「あんた等も死んだって文句言うなよ」
言い終わるよりも速く、仮面の男の正面にいた頭らしき男の頭がはじける。仮面の男の手には未だ煙を上げる拳銃が一つ。
獲物に撃たれた。他の山賊がその事実に気づく前に仮面の男の拳銃が音をあげる。
射撃は的確に、そして確実に対象の命を奪う。
そして、銃声が止むとそこに立っているのは仮面の男と一人の山賊。
「どうやら玉切れ。運はあんたに有ったらしいな。殺すなら今しかないぞ」
そんなことを言いながら悠長に拳銃に弾丸を込める。
そんな中、我に返った山賊は自分の得物を仮面の男の首に突きつける。
「はっずれ〜」
仮面の男は首を突き刺されながらもけらけらと楽しそうに笑う。
普通なら絶命してもおかしくない傷を受けながら笑う男を見て、山賊が言葉を無くし、そして我に返る前に銃声が鳴る。
そして、山は何事もなかったかのような静けさを取り戻す。
「ったく、相手の強さも分からずに襲うなっつーの。普通こんな所を単独で歩くのは、よほどのバカか襲われても返り討ちに出来る強者かなんだからな」
そんなこと呟き、仮面の男――クロスド・シャープネスは山道を再び歩き始めた。