こんにちわ! エンペランサで〜ッス! あたしはかれこれ500年ぐらいは封印されてたのかしら?? かなり窮屈だったわ。ってゆーか封印されてから随分前に言ったとおもうけど、しゃべる木!! あやつと、ずっとなにかと口喧嘩してたような…。
最近になって(最近といっても50年くらい前。)トラも仲間に入ってギャーギャー騒いでいたような気がする。森の木が少しずつ変化していることとか、召還魔法の略文を考えたり、なぜそんなこと考えているのかって?? 長生きだと暇で暇でなにかと博識になるのよ。ほら、動けないでしょ? 私も木も。どれだけ情報が集められるか競争してたりしてたのよね〜。新しい理論の魔法を考えたり。中でも傑作くだらない魔法は、回復魔法の応用で、回復魔法は破損部分の細胞活性化を著しく促す魔法でしょ? それを、植物で応用したのよ! で、木とか植物って年を重ねることに重厚が増すし、丈夫になるでしょう? それをいち早く出来ないかと思って出来たのが、“ライズモア”これがね〜意外な効果だったのよ。木で試してみたら、たしかに大きくなったのよ。これは成功だと思って植物に試したら、なんとその植物は小さい姿がそのまま拡大しただけなのよ! つまり成長は促されなかったの。細胞分裂は促されなくて、細胞個々が大きくなったという失敗に終わったのよ。きっとあやつまだ“ライズモア”研究しているだろうな。これはきっと幻の魔法になるわ! お〜っとかなり長くなっちゃった。
リエルを追いかけ走る俺にもう気分の悪さなど忘れていた。船を覆っていた霧がうすくなっていた。しかし世の中にはとんでもない生き物がいるものだ。人食い霧って……うぅ〜恐ろしい。霧に包まれて、体が徐々に侵食されていくなんて、サブイボものだ。船室に一時避難しててよかったとしかいいようがない。
しかもクロスドは腹抱えて戻ってくるし、いったい船旅ってどんなもんなんだ??
こんな旅を金持ち連中は大金はたいてするらしいが、訳が解らない。金持ちになると、思考回路がおかしくなるらしいが、こういうことなんだろう。
「ねえ! ブレスくんこの先になにかいる」
エンペランサが急に言い出した。操縦室と金持ちの船室が連なるフロアだった。
確かに言われてみれば、普通じゃない気配を感じる。けど……
「呼んでるような気がする。……呼ばれてる」
エンペランサが俺の顔の前に回りこんだ。
「だめ! ただならぬ気配よ! あの霧とか、あの馬鹿男と同じ気配!」
クロスド?? どーゆーことだ?? しかしそれよりも呼ばれていることにどうしても気になってしょうがなかった。
「ごめん。エス、体がどうしても行きたがるんだ」
エンペランサをおし除け猛スピードで走った。エンペランサもイヤだと言いつつ付いて来てくれているのも解った。自分でもなぜ走っているのかも解らなかった。
俺の視界に男とも女ともつかないスラリとした背の高い人がいた。生命が存在しているような気配ではない。いや、生命の灯火が今にも消えてしまうような感じだった。
「あ……」
俺はこの人を知っているような気がした。けど思い出せない。その時その人は笑った。何かに懐かしむように。
「あなたは……」
その先を俺の口が勝手に言おうとしていた。俺の意識とは別に何かが反応して動いているようだった。しかし、その人が俺の口をフワリと押さえて言わせなかった。
「ブレスくん! ブレスくん! ねえ! しっかりして!」
俺はハッした。エンペランサが俺の頬をペシペシ叩いていた。
「あ、ああ。…あれ? あの人は?」
「もうとっくにいなくなちゃったわよ! よかったぁ。魂抜かれちゃったのかと思ったわ〜」
「それにしてもあの怖い人から何貰ったの?」
え? と思い手になにか握っていることに気づいた。
「??? なんだろう? これ」
飴玉のようにまんまるの赤い透明な球体だった。なんだか解らないからポケットの中に入れてしまった。クロスドに聞いてみよう。博識だと自分でも言ってたし、そこで解ればいいし、解らなければ解らなかったでいい気味だし。
「それよりリエルちゃん追いかけてたんじゃなかった?」
ああそうだ。
「ブレス!」
後ろから呼びかけられ、振り向いたら、リエルが息せき切って呼んだ。
「救命船はあった! 怪我人の応急処置を手伝ってくれ」
「ほら、ブレスくんが怖い人に合ってるから先こされちゃったじゃない」
俺はリエルと共に甲板に戻ると、船長をはじめ、助かった人達が集まっていた。
俺はクロスドに聞こうとしていたが、クロスドは腹に包帯を巻かれ壁にもたれ寝ていた。
「ブレス、悪いが調理場に行ってお湯を貰ってきてくれ」
リエルに言われて何をしていいのか解らずにいた俺は慌てて走ってとりに行った。エンペランサは甲板に残ってリエルの手伝いをしていた。
お湯を運んだり、怪我人を背負ってはあっちにはこんだり、こっちに運んだり、いいようにこき使われ、救命船に運び入れ、俺が救命船に乗り込んでから、リエルとクロスドが船長と甲板に残ってなにか話し合っているのが見えた。
「ハイッ! ブレスくん! そっちの人の汗拭いてあげて! 手を止めない!! みんな苦しんでるんだから!」
「ハイッ!」
俺はこの赤い球体のことを聞くのはまだ先になるようだ。
救命船はこの先クラリアット海域で漁をしている船に助けてもらう予定だった。
ウェノで連絡を取り合ってそういう段取りとなった。漁船にみんなが無事助けられたら、エンペランサがストレシアの方面に飛んで行こうとこっそり俺に言った。エンペランサも船はこりごりのようだった。自分から飛ぶからもう船に乗りたくないと言うなんてめずらしかった。
「この女性自体には、害はないんですね」
船長が言った。
「ああ。けど、セシアと同化している霧に問題があって」
甲板に残ってセシアのことについて相談をしていた。