真昼間、市場のど真ん中で騒ぎを起こした後、アルフェリアは何事も無かったかのようにそこから去ったその足で警備隊の詰所へと向かった。
詰所の前の掲示板にはいくつかの手配書がある。
「さすがに強そうなのが多いな♪」
手配書の写真を見て楽しそうに呟いた。
いつのまにか入り口のところに三十前後の男がいた。服装から見てここの警備隊の人間だろう。
「坊主。何か用か?」
坊主と呼ばれたことに多少ムッとして、低い声音で聞き返した。
「坊主っておれのこと?」
「おまえ以外に誰がいるんだ。で、何の用だ?」
む〜〜〜〜…
一応言外に坊主呼ばわりするなという意味を含ませていたのだが気づかなかったのか無視したのか。
「賞金首を教えて欲しいんだ」
警備員の目が点になる。
「……………………は?」
「賞金首を、教えてくれって言ってるんだよ」
「待て待て待てっ! おまえいくつだ!?」
「十五」
「返り討ちに遭うのが関の山だぞ」
警備員の目が真剣なものになった。本気で心配してくれているらしい。
「大丈夫だよ。剣の腕はまだちょっとおぼつかないけど、やばけりゃ奥の手があるから。あんまし使いたくないけどな」
「奥の手?」
「そう、奥の手」
聞き返す警備員にアルフェリアはにっこりと笑顔で返した。
しばらく言い合いを続けた二人だが、まったく引かないアルフェリアに警備員が折れた。
「わかった……。ただし、あんまり高額なのは教えないぞ」
高額=それだけ強いということだ。
強いやつを教えてもらえないというのは少し残念だったが、一つも教えてもらえないよりはマシだ。
アルフェリアもそこで妥協して、十数名分の手配書の写しをもらってほくほく顔で宿をとりに向かったのであった。