ファンタジア

ルンド12

「ところでさあ、誰かセザール達が何処に逃げていったのか知ってる?」
 突然のアルフェリアの発言にその場の残り二人は動きが止まった。
 肝心なことに気が付いた。
 行き先を誰一人として知らないのだ。
「どうしましょう〜」
 珍しくレイチェルが慌てているような声色で言う。
「この辺りは木や草が多いから、足跡を辿っていったとしても途中でとぎれてしまうのは目に見えていますね」
 ルンドも表情には出さないが、内心焦っているようだ。
 三人がそれっきり黙り込んでどの位の時間が経っただろうか、急にルンドが行動を起こした。
 自分の荷物の中からある物を取り出したのだ。
 それを見たレイチェルがその手があったかとポンと手を打った。
「 ウェノ ですわね〜」
「はい、これなら行き先を本人達に直接訊ねることが出来ますから確実に追いつくことが可能でしょう、セザールさんにはこれを一度見せていましたからきっと気付いてくれるはずです」
 ルンドが持っている鳥の像を見たアルフェリアは不思議がっているようだ、だが、それがどんなものかルンドに訊くのは気が引けた、変なところで負けず嫌いの面が出てしまった。
 そのまま口出ししないでいると、ルンドはなにやら手紙を書き始め、それを像にくくりつけた。
( ? 何やってんだろう……)
 その疑問に答えるかのようにルンドは口を開いた
「……ウェノ・アエラ・エン・セザール……」
 言い終わると同時に鳥の像が輝き始め、ルンドの手から一瞬放れたかと思うと、一筋の光となって飛び立っていった。
 まるで本物の鳥のように翼をはためかせながら……

 返事はすぐに届いた、どうやらセザール達はここから更に南下したリルクリルという町を目指しているようだ。
 更にそこには自分達を追ってきた残りの騎士達は、フォルクスが粗方片付けたから心配するな、と記してあった。
「それならひとまずは安心ですわね〜」
 レイチェルがほっと胸を撫で下ろす。
「では、念のためにもう一度合流しましょう。忘れ物の在村の宝刀も届けなければいけませんから」
 一同がその発言に賛成した。

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