舞会が近くなるとそれに伴いあたりの使用人達やいつもはそれほど活気でも無い城下町もやんややんやとお祭りの様に騒ぎ始める。
レイチェルはその人々が活気だつ頃になるととてもなごんだ心持ちになってくる。
昔からレイチェルは人間のやる気や努力などを見守るのが大好きなのだ。
「やはり……舞会はこう言った意味ではいいわねぇ〜」
「はい。レイチェル様」
薄い絹の向こうに見える町の様子を微笑みながら覗いていたレイチェルは、同じ部屋にただ一人いる女性、アーリン・クランに話し掛けた。
アーリンも忙しいこの頃にレイチェルの笑顔を見れたのが嬉しかったのか、レイチェルの笑みに自分も微笑みを返していた。
「それで、舞会にはフォルクスさんとリオさん……それと、アルフェリアさんもいらっしゃるのね」
「はい。最後のアルフェリアと言う少年の事は、猊下に報告しておいた方が良いかと……」
「……わかりました。ありがとう、アーリン」
「いえ、私は……」
「ふふ。それで、貴女の方の仕事はどう?」
「私のですか? まだ未熟者ですから……毎日舞会の準備に追われておりますわ」
「いいえ、貴女は近々……いえ、必ずこのラジアハンドに
必要になる女性、私が居なくなっても、貴女がこの国を支えていってあげてちょうだい。例のエーリック殿と一緒に」
笑みを含ませながら言ったレイチェルだったがアーリンにはとても笑うこと等できなかった。
それは、今のレイチェルの言葉の中にとても、今では想像も出来ない意味が隠されている気がしてならないからであった。
「それじゃあ、私は会議があるので失礼するわ。
アーリン、ラジアハンドに何が起きても……貴女はこの国に必要不可欠な人物だと言うことを忘れないで」
「……猊下」
そして、静かに扉と締めていったレイチェルをアーリンは見つめることしか出来なかった。