開始の合図と共に、ドールドーラがウェンめがけて飛びかかった。
図体が大きいわりに速さはたいしたものだった。
ウェンはひらりと宙に舞って攻略法を考える。
(どう考えても力じゃかなわないよね……)
(……よし……!)
「双身の術!」
これは分身の術の応用。
分身の術は自分とそっくりそのまま動く分身を最大6人つくり出す技。
双身の術はその6体を一つに纏め、自分と違う動きをさせることのできる分身の術よりもずっと高度な術。
宗奉流忍法は基本と応用のくり返し。
2人のウェンが、同時に動き出す。
ドールドーラのまわりに半円ずつ描いてまた一ケ所で合流する。
合流したのち、ウェンが地に手をつける。
「火遁の術!!」
あっと言う間にドールドーラのまわりを炎が囲む。
2人のウェンは半円を描くと同時に火薬の線を引いてきたのだ。
円ができたところで一ケ所に火をつければ、あっという間に炎の壁が出来上がる仕組み。
「わあっ! 結構やるじゃん、ウェンってヤツ!!」
シールドの中から観戦しているサダインがはしゃぐ。
「……いいの?」
「何が?」
「燃えちゃうわよ? 貴方のペット」
「大丈夫だよ。
ドーラはちょっとやそっとじゃ焼けないもん」
サダインがまた楽しそうに試合に観戦する。
「全っ然怯んでないじゃん、アイツ……」
ウェン空からドールドーラの様子を見る。
宗奉忍者は、風を利用して宙に浮く術を見い出した。
『華風の術』である。
「火が恐く無いのかな……うわっ!」
ドールドーラが再びウェン目掛けて飛びかかった。
ウェンを仕留めはしなかったものの軽々と炎の壁を通り越してしまった。
「わっ、すっごいジャンプ力……
じゃあ……」
フードで自分の顔を覆う。
「痺れ玉!」
ドールドーラの顔目掛けて卵型の玉を投げる。
見事命中。
弾けて中に詰め込まれていた痺れ粉が飛び散る。
「ルルッ……!?」
ドールドーラがふらつく。
すかさずウェンは鎖鎌の刃のついていない方を投げ、ドールドーラの右前足に絡ませてひっぱる。
ドーラはあっというまに横に倒されてしまった。
身体は麻痺して動かない。
完全に戦闘不能である。