ファンタジア

セザール10

「おっ!?」
 昼になり、一路宿へと歩いていた俺の目の前に、一匹の鳥が降り立った。
「お、ああ。ウェノだな」
 俺はその鳥をつかみ、括り付けてある手紙を取った。
「…はー。おい、アルサロサの三人、ラジアハンドに飛んだってさあ」
 と、手紙の内容を喋りながらリオに近づいて行く。そして手が届くところまで来たとき、ほらこれ、と手紙を差し出す。
「はい」
 リオはとっさの事で無意識の内に手紙を受け取っていた。
「ふむ?」
「あ……」
 彼女ははっとした様に俺を見ると、そそくさと俺から離れて行く。
「ん〜〜〜……」
 俺は頭をカリカリと掻く。
 彼女は読み終わるとすすすっと歩いて来て手紙を俺に渡し、また離れた。
「なんだかね…。リオさん、後であんたに故郷に帰れって言おうと思ってたんだがね、」
 それを聞いたリオは顔を上げて俺の顔を直視した。
「それよりも、旅を続けたほうがいいかもしれないな。おまえは世界が広いって事を学んだほうがいい」
 と、俺は続けた。
 リオは表情を変えることなく聞いていた。
「…さあ、サグラに帰ろう。きっとフォルクスが腹を空かせてるだろうさ」

「それじゃあ、お前たちは船でラジアハンドに渡るんだな」
 昼食として出されたのは、魚、穀類、野菜中心の料理だった。
「はい、そうなりそうです」
 おひたしという、野菜を調理したものが入った小鉢を手に取りながらフォルクスが言う。
「船か。最近良い噂は聴かないが、まあ、陸を半周するよりはマシだろう」
 俺は切り身の焼魚をかじって言う。
「けどいいのか、あっちに渡ったらまたルンドに会うかもしれないぞ」
 リオは海草入りのにごったスープを飲みながらこの会話を聞いている。
「まさか。まだアルサロサのいるんでしょう?」
 そう言われて、まだフォルクスにルンドからの手紙の事を話していなかったのを思い出した。
「ほれ、これ読んでみな」
 ポケットから手紙を引き出してフォルクスに渡す。
「……」
「そういうこった。けど、あのお騒がせなお嬢さんが動かない限り道でばったり会うって事はない思うぞ」
 フォルクスは少し考えていたようだが、すぐ手紙を返してきた。
「そうですね」
 と、食事を再開した。
 そして、だいたい食べ終わって部屋に戻ろうかという時、宿の主人がフォルクスを呼びに来た。何かと思って俺たちもついて行くと、昨日の来た騎士ともう一人昨日はいなかった騎士が待っていた。

©ファンタジア