ファンタジア

リョウルク22

『早計ではなかったと?』
『全くそうではなかったとは言いませんが、失敗だったとも言いません。実際動き出したでしょう? 事態が』
『良いとも悪いとも分からず、な』
『もっと機を待ってからの方が良かったのではないのか?』
『機の熟しすぎはいけませんよ。腐ってしまいます。今回の事を見てもそうでしょう』
『そういう事では――』
『元々念には念を入れての事だったでしょう。 三番目の念を誤ったからといってどうなる物でもありませんよ』
『その通りだな。主よ。機は熟している。支障は無い』
『ぬ、承知した。して、あやつはどうなっておるのだ?』
『動きはありません。三人ほど食らいましたし、獣も不必要なほど獲ってます。ためる性分なんでしょう』
『亜人どもは?』
『≪長耳≫は見張っているとの事ですが、手を出すほど愚かでも無いでしょう。≪小精≫は今となってはそれほどの力もありません』
『恐れるに足らん。そういう事だな』
『問題はあれがアスリースの者を殺してしまった事の方です。かの国が本腰となればいかにしても我等を倒しましょう』
『悔やまれる確率だったか……』
『主よ、確率を言っても仕方があるまい』
『そうです。その事は利用させてもらいます』
『いかにして、だ?』
『相手側の不始末となりましょう。何一つ動かないのですから』
『出来るのか? ぬしが危うくなる可能性もあるのではないのか?』
『所詮は木偶(でく)です。現に今もそうでしょう? 大丈夫です』
『そうだな。主よ』
『む、まかせる』
『……決まったんでありましょうか?』
『決まった』
『それはそれは吉報の極み。でわ、不肖このわたくしめがデーレ=ドゥウスト殿に知らせて参りましょう♪』
『……さっさと行け』
『了解でありますですでます。ではっ』
『……何故あんな奴が……』
『騒がしい人です……』

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