ガヤガヤガヤガヤ……
「拙者、テーヴァの城下から来た在村楽という者ですが……」
「あぁっ! 話しかけないでよ! あなた邪魔なのよ! そこ、どいて!」
ガヤガヤガヤガヤ……
……ここはアスリースとの国境へと続く関所の酒場町。
売り子がせわしなく動き回り、まわりの者を押しのけていく。
道場を巣立った楽は隣国のアスリースを目指していた。
国境の関所は多くの旅人達でにぎわい、
城下とは一風変わった雰囲気をかもし出していた。
国境を越えるためには通行証が必要だが、それを知らない楽は、初めて見るこの賑やか な様子に驚き戸惑い、どうしたらよいかわからなくなっていた。
楽は困惑した表情を浮かべ、ただ立ちつくすしかなかった。
そして町全体が紅く染まり、西日が傾く頃になってやっと、楽に話しかける者が現れた。
黒髪に青い目をした男だった。