ファンタジア

在村楽2

 ガヤガヤガヤガヤ……
 「拙者、テーヴァの城下から来た在村楽という者ですが……」
 「あぁっ! 話しかけないでよ! あなた邪魔なのよ! そこ、どいて!」
 ガヤガヤガヤガヤ……
 ……ここはアスリースとの国境へと続く関所の酒場町。
 売り子がせわしなく動き回り、まわりの者を押しのけていく。
 道場を巣立った楽は隣国のアスリースを目指していた。
 国境の関所は多くの旅人達でにぎわい、
 城下とは一風変わった雰囲気をかもし出していた。

 国境を越えるためには通行証が必要だが、それを知らない楽は、初めて見るこの賑やか な様子に驚き戸惑い、どうしたらよいかわからなくなっていた。
 楽は困惑した表情を浮かべ、ただ立ちつくすしかなかった。

 そして町全体が紅く染まり、西日が傾く頃になってやっと、楽に話しかける者が現れた。
 黒髪に青い目をした男だった。

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