ファンタジア

エルファ21

「ああ!美味しい!」
「ほんっと。美味しい」
 道端にあった結構繁盛しているらしき食堂で、エルファとヘスティアの二人は次々と注文していた。
 その食堂は中華料理屋らしく、メニューは全て漢字だけの訳の分からないものだったので、二人は手当たり次第に注文していった。
「ねぇ! エルファ君知ってる!?」
「え? 何が?」
『ぎょーざ』とか言う肉を包んだ皮を焼いたものをゆっくり食べながら、ヘスティアがエルファに聞いた。
「明日から闇市始まるのよ」
「へぇ。……ってことはもう楽来てるのかな? 来てるんならブルムンクスの店に連れてってあげたい……」
 エルファは『ぎょーざ』を口へ運ぶ手を止め、「ブルムンクスの店何処だったか覚えてるかな?」
 と呟いた。
 ヘスティアは、シェーナに何か肉の塊のようなものを与えて言った。
「そうね。『追跡の瞳』の事も楽と再会してから……」
「よし!」
 エルファがガタンッッッ。と椅子から立ち上がると大声を上げた。
 周りに座っていた人たちが何か?とエルファに注目する。
「しー! 恥ずかしいから座って。落ち着いて喋りなさい」
 ヘスティアがエルファの腕を引っ張った。
 しかしエルファは気にせず、大声で言った。
「楽を探しに行こう!」
 そして店を出ていってしまった。
「ちょ……エルファ君!」
 ヘスティアは、エルファの置いていった袋を掴みカウンターにバシッとお金を置くとエルファを追って外に出ていった。

「はぁぁー! 疲れたー!」
「あんたを追って走ってきた私の方が疲れたわよ!」
「どっかで休もう。……あ、あそことか?」
「そうね」
 いろんな宿・酒屋・食堂を走って回ってきた二人は道のはじっこにあった『料理屋・ジュラルミン』に入っていった。
 ……いや、入っていこうとした。
「あれ? これ鍵かかってるよ?」
「ホントだ。ほかの所行こうよ」
 エルファは鍵をガチャガチャしてみるが、やっぱり開かなかった。
 二人は曲がり角に見つけた飲み物や(?)に向かった。
 その時。
 ガチャ。
「お〜い。あなた達ぃ!」
 店の扉が開き、店長らしきおじさんが二人を呼び止めた。
 二人は、「あ、開いた」と言っておじさんの前まで来て言った。
「ちょっと、店開いてるなら鍵閉めない出よね」
「すみません」
「そんなことより早くなんか飲まして」
「はい。店の中にお入りください。『キュア』を用意いたします」
 そういっておじさんは店の中に入っていった。
 二人は言われるままに店の中に入り、扉に一番近い席に座った。
 ヘスティアは店の中を見回す。
(うわ。めちゃくちゃ「繁盛していませんー!」って感じの店。はいんないほうがよかったかも)
 店の中には客が一人、こっちをじっと見ている。
 女の子だ。
 おとなしい犬を連れていた。
「あの」
 おじさん。……主人が薄く蒼いキュアの入ったグラスを二つ手に持ってやってきた。
 エルファはそれを一口でそれを飲み干すと、「にが〜い」と顔をゆがめた。
 主人は傷付いたようにニコニコと笑う顔を何ともいえない表情へと変化させた。
 ヘスティアはエルファの一言を聞いて、口へ運びかけたグラスをテーブルに置いた。
 ヘスティアがまた店の中を見渡すと、さっきの少女が何かを確信したかのように一人でうなずいていた。

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