ファンタジア

クロスド3

  銃口が咆哮をあげる。その結果数人の命が失われる。
 自分を襲った相手、しかしクロスドはそれに若干の違和感を感じる。
 すぐに分かった違和感の正体。それはこの襲撃者達は自分を狙っていたのでは無い
と言うことだ。
 さらに襲撃者達の装備は山賊とは違い、明らかに雇われモノの装備だ。
 こんな夜の山道で何かが蠢いている。
 それは彼の好奇心を大きくくすぐる。
「……面白くなってきた」
 ニヤリと呟き、彼は山道を歩く、この出来事の中核へと。

 

 息が上がっている。それはどうしようもない事実。
 最初の襲撃より速2時間。
 次から次へと波状攻撃をしてくる襲撃者達。初めは山賊ばかりだったが途中から毛色の違う者たちも混ざり始めている。
 倒した人数は50を越えた辺りで数えるのを止めた。
 まるで山狩りで獲物を追い込むような、否、もはや確実に山狩りである。
(金にモノを言わせて自分の手は汚さない……。まさにあの人にふさわしいやり方だな)
 リエルはこの状況を作り上げた人物を思い描き毒づく。
 しかし、物量にモノを言わせたこの作戦は確実に効果を上げている。
 成功報酬とでも言えば一人一人の賃金は少なくすむ。ただの小娘――実際はただの小娘ではないが――を一人捕まえる仕事だと言うことで名乗り出た者も多いことだろう。
 状況は不利。体力も限界。もはや後にも先にも行けない。
 ――どうせ捕まったって命は取られやしないんだ――
 頭のどこかがそんな言葉を投げかける。
 だが、そんなことにはうなずけない。死んだ方が捕まった方よりもましなのは目に見えている。
 山さえ越えれば奴らだって、そう簡単には手を出せないはずだ。
 重い足を引きずり歩き続ける。しかし――、
「いたぞ! こっちだ!!」
 不意に後ろから聞こえる声。見なくとも分かる追っ手。数は大体3〜4人と言ったところだろうか?
(万事……休すか……)
 そう思い瞼を閉じる。いざとなれば追っ手共々死を選ぶつもりだ。
 覚悟を決める。そして――銃声。
 だが、銃声の鳴り終わった後も身体に異変はない。
 おそるおそる目を開く。今まで自分を追ってきた奴らが頭、もしくは胸に穴が空いて倒れている。
 そして、月明かりに中一人たたずむ仮面の男。
「あなたも……こいつ等の仲間か?」
 そう仮面の男に尋ねる。しかし、それに仮面の男は頭を振り、
「腹ぺこオオカミに襲われそうな赤ずきんを助けに来た狩人――とでも言えばいいかな?」
 そう笑みを浮かべた……。

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