ファンタジア

ブレス16(砂塵の国の仮面と少女と竜使い7)

「……」
 俺は今はっきり言って困っていた。クロスドに小遣い稼ぎしないか?と言われ俺は、はっきり“やだ。”と断ったのに、借金の金額を呟かれ、小遣い稼ぎ帳なるものを貰った。その帳簿にはクロスドのおすすめ手配犯の顔の特徴と主な手配理由が書かれていた。顔が割れている者は顔の絵入りの手配書を丁寧に貼ってあった。その帳簿を宿から追い出されたため、喫茶店でお茶しながら見ているの
である。
「あいつ細かすぎ」
 俺はキュアという苦味のある甘い飲み物を飲みながらページをめくる。
 キュアは砂漠の国の特産品でもあるピコの実を煎って磨り潰し、飲み器にはまる専用の器に、ろ過紙を敷きピコの実の粉を入れ、お湯をピコの粉を通すと、香ばしい匂いと少し甘い香りがする苦味と甘さがなんともいえない飲み物が出来あがる。ピコの木は少ない水と沢山の光で育つ砂漠だけの植物だった。砂漠の民はこの木を見つけると近くにオアシスがあるとして目印にもしている。背の低い木で、丸い形に葉を茂らせる。花は蒼月の満月の前後2,3日中の毎
夜、月のような真青の薄い薄い花弁が幾重にも重なる小ぶりの花が咲く。夜の内に花を摘むと真青な花はその青さを残したまま日陰で楽しむことが出来るが、朝になり日差しを受けると真白な花へと変わる。真青な色のまま乾燥させハーブと一緒に入れるお茶は幻のお茶と言われ、闇市で高額取引される品の一つだった。高額で取引される理由として青いままの花を摘むことは量がなかなかないためと、そのお茶の色が光の具合や水の状態などあらゆる作用で透明な薄い蒼だったり薄い紅だったり微妙な色あいをするお茶のため砂漠の女神サロアが宿っているお茶だと信じられているからだった。というのは店のマスターの長話しの受け売りであったりする。
  さて、帳簿の中身だが、じつにバラエティーにとんでいた。凶悪事件の犯人、事件の重要参考人、家出人、果てはペット探しなどなどだ。けど、パラパラめくっていて目についてしまったページがあった。このなにげなく目に付いたのは後々俺にとってもクロスドにとってもリエルにとっても衝撃的な事件となってしまうのだが、今の俺はそんなことは気が付かなかった。
「ピコの栽培をしていた一家がワジュールから少し離れた場所にある栽培所で惨殺されているのが見つかり、ワジュールの警備隊はピコの栽培の第一人者であった被害者はなんらかの事件に巻き込まれたとして捜査していたが、手がかりはなく唯一、生き残ったのではないかと予想される末娘パルを捜索するが発見出来ず、賞金をかけられ、生きてつれてくれば三万ラージ、生きていなくとも本人だということが確実に証明されるものを持ってくれば一万ラージ。その他
情報に関しては警備隊との要相談ね〜…。強面の凶悪犯だと分かっているヤローを捕まえるより女の子を探した方がいいかな。結構良い値だし。これにするか」

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