受付を済ませた二人はとりあえず宿に向かうことになった。
試合までもう少し時間があるからだ。
「そういえば、アル。お前一人で来たのか?」
今更といえば今更の質問にアルは、ハッと冷や汗を流す。
ルークと再会した喜びですっかり忘れていたのだ。レイチェルとルンドのことを。
「あ…………………………」
すこしだけ青い顔を見せたアルフェリアを見てか、ルークは苦笑いして小さく息を吐いた。
「どこにいるのか知ってるか?」
問われて考える。
ルークを見つけたのは街に入ってすぐだった。そのときはまだ宿も決めていなかった。
そういえば別れ際にレイチェルが何か言ってたような気もするが……覚えていなかった。
「あ…あはははっ。どうしよっか……」
アルフェリアは乾いた笑いを浮かべた。
「どうしようってもなぁ。アルは街に何しに来たんだ?」
「オルドランって人に会いに……」
それを聞いた途端ルークは大爆笑した。アルフェリアはむっとして聞き返す。
「なんで笑うんだよ。僕なんか変なこと言った?」
「多分コロシアムにいるよ。参加してる」
ルークは笑いを堪えながら答える。そして、コロシアムの出場者募集の紙を見せてくれた。
そこには、賞金やルールが書かれているのだが、その賞金とは別に優勝者に対する特典のことも書かれていた。
”優勝者にはあの四剣聖の一人、オルドラン様との特別面会権が与えられます!!”
と。
「こんなのあったんだ」
感心したように言うアルフェリアを、ルークは呆れ顔で見返した。
「このためにこの街に来たんじゃないのか?」
多分そうなんだろう。半分以上成り行きで行動を共にすることになっていたものだから気付かなかった。
「そっか……」
アルフェリアは、どこかぽけっとした様子でその用紙を見つめていた。
その数時間後。戦士部門の第一回戦があった。
魔法部門は朝方でそれまではまだ時間があるのでルークの試合を見物していた。
ルークは五試合め。もちろんルークの圧勝だった。そのついでに他の試合も見物する。
「あ!」
いた! 十一試合め、ルンドが出ていた。
フードを目深にかぶっているが、その闘い方を見ればすぐにわかる。
しかし……なんで「小鳥ちゃん」なんだろう……。
疑問に思ったが、別にあとで聞いても良いことだ。
そしてそれからさらに数時間。
魔法部門の試合は朝、一番最初の方だ。
一旦宿屋に戻って睡眠はとったものの、まだ少し眠い。
アルフェリアは大きなあくびをしながらコロシアムへ向かった。ルークが心配そうに、けれど軽い口調で言ってくる。
「おいおい、大丈夫か? 一回戦敗退なんてしないでくれよ」
「大丈夫だよ♪」
対するアルフェリアの表情はあくまでも明るい。負けるなんて微塵も思っていなかった。
こちらでもすぐにレイチェルを見つけることが出来た。第一試合だったのだ。
アルフェリアの試合はそれよりもうちょっと後、第三試合だった。
自分の試合が終ったら声をかけようと思っていたアルフェリアはいきなり高位魔法を使って、数分とかけずにその試合を片付けた。
が、どうやらレイチェルは自分の試合が終ったらさっさと闘技場を出て行ってしまったらしく彼女を見つけることは出来なかった。
「……ま、いっか。二人とも勝ち残ってるみたいだし」
最悪試合がぶつかれば必ず会える。
そう思ったアルフェリアは、軽い足取りでルークのもとへと向かっていった。