ファンタジア

アルフェリア2

 家を出てからすでに五年近く。
 初めの頃は慣れない旅にいろいろあったが、最近ではそこそこ落ち着いてきている。
 トラブルメーカーであるということは変わっていないが……

 アルフェリアは今ストレシアの国にいる。
 せっかく魔法を習ったのだが、習った環境が悪かったのかどうも魔法は好きになれなかった。そこでソーサレスとは正反対のナイトの道を選び、剣の技術にも自信がついてきたところで腕試しとばかりに治安の悪いこの国へとやってきたのだ。
 ストレシアで訪れる最初の街……の入り口。
「ふぅ……。やっとここまで来たか、長い道のりだった」
 確かにある意味長かった。
 素直にソーサレスになればいいものを魔法は嫌いというその理由だけで、持ったこともない剣を持ちナイトを目指したのだ。家から出してもらなえなかったものだから運動することもなかったし当然体力も無かった。五年間きっちり修行してやっとナイトと名乗れるレベルになったのだ。
 ふと気づくと数人の通行人が遠巻きにこちらを見ている。
 入り口で感慨にふけっている姿は変な人以外の何者でもなかった……。
 アルフェリアはそそくさとその場を後にし、街中へと入っていったのであった。

 クラリアットとはまた違う活気を持つストレシアの街の様子を楽しそうに眺めながら歩いていく。
 道に広がる市場をあっちへ寄りこっちへ寄りしていた時だ。
 後ろからいきなり腕を引っ張られた。
「おい、ガキ。ぶつかっといて謝罪すら無しかよ!」
「はぁ?」
 人通り激しいこの場所でまったく人にぶつからず歩くのは不可能。彼はイチャモンつけて金を巻き上げるかなんかするつもりなのだろう。
 普通に考えれば、ここは堪えて穏便に済ますのが一番だ。ここは人通りも多い。向こうとてあまりにも乱暴な手は使えない。頭ではそれを理解しているのだが、そう行動する気などさらさらなかった。
 アルフェリアが取った行動は穏便とは正反対の行動だった。
「あのさぁ、無茶言うなよ。この人ごみで、どうやったら一人の人間にもぶつからずに動けるってんだ。あんただってここに来るまでに他の人にぶつかったりしただろ。
それともなにか? あんたはぶつかった人間にいちいちそうやってイチャモンつけながら歩いてるのか」
 ザワ……
 この不穏な空気一斉に人の波が二人から離れる。
「こっの、くそガキ……」
 言い返され男がうめく。
 それを見てアルフェリアは不敵に笑った。それは男の神経を逆なですることになった。
 男がこちらに走ってくる。
 アルフェリアは男の大振りの拳を少しだけ横に移動することで避けた。
「そんなもん?」
 相手を挑発する言葉を選んで言うアルフェリア。
 男は顔を真っ赤にして飛びかかってきた。
 鞘のまま剣を抜いて男の鳩尾に思いきり叩きこんでやる。男は腹を抑えてその場にうずくまった。
「う〜〜ん……ストレシアには強いやつがたくさん居るって聞いたんだけどなぁ」
 アルフェリアは涼しい顔でその場を去っていった。

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